塩澤組子は木の天然色をそのまま使用

      組子の表現は主に幾何学模様で構成され、約250種類の組み方があります。 塩澤組子の特徴としては、伝統である幾何学模様の組子を最小限に加工し絵画風に組み上げるところにあります。 最小限に加工する理由は、組子もテレビの画質と同じように細かければ細かいほど繊細に表現することができ、絵画のような作品を作ることができるからです。地組を始め一つ一つの部品を、ピンセットを使いながら組んで仕上げます。作品一点で5万個から8万個、大型作品になると15万個もの部品数が必要になります。 絵画風に描くもう一つのポイントは色彩です。 一般的に組子作品は一種類の材種を使用し、幾何学模様の柄を組み分けることでデザインします。 しかし塩澤組子は、木の天然色をそのままに32種類の木材、32色を用意しております。デザインの色に合わせどこにどの木を使用するかを決め、一つの作品で5~10種類の木材の色彩で表現します。 木材の中には「神代」と呼ばれる、土の中に1000年以上埋もれていた特殊な木があります。約2500年前、秋田県の鳥海山が噴火したときに火山流によって倒木された木で、神代杉、神代欅と名が付きとても貴重な木材です。 木材は丸太で仕入れる時もあり、自ら製材もします。神代杉や神代欅を製材するとノコで引いたばかりの表面は薄茶色ですが、酸素に触れ酸化することで、30分で薄青色に一時間後には黒色に変色します。 秋田県以外にも富山県や北海道にも神代木があり、産地によって黒色の濃さが違います。沼の中に1200年埋もれていたグレー色の神代木もあります。木材も種類によって硬さや粘りが違い、長所短所があります。 組子を加工する上で、もちろん加工の技術は大切ですが、それと同様に大切なのは32種類の材種の特徴を知ることです。何万もの部品を一ミリの100分の一の精度で加工するには、木を知らなければなりません。

世界に一点のオンリーワンの組子作品を製作

一番大切なことは、お客様に作ってよかったと喜んでいただくことだという思いから、作品のデザインはお客様のご要望をお聞きして、時には現地まで出向きスケッチをして、お客様にご納得いただけるまで下図を描き、世界に一点のオンリーワン組子作品を製作しております。お客様がどこまで下図のように組子で表現できるのか楽しみにされ、作品をご覧いただいた時には、「組子でこんなに細かな所まで表現できるのですね。組子の陰影もプラスされ、見れば見るほど深みが増していく」と喜んでいただいております。お友達やお知り合いをご紹介してくださったり、一人のお客様が二点、三点とご依頼してくださったりします。

自ら考案した新しい技術

組子作品の制作には、伝統の技術も多く用いますが、自ら考案した新しい技術もございます。私は桜が好きでお花見に行くのを毎年楽しみにしていて、組子でも桜を表現できたらと思っていました。 伝統の組子の柄に「桜」と名のついた組み方がありますが、桜だとはっきり分かる柄ではありません。そこで、だれが見ても桜だとわかる組子を作りたいと思い、12年ほど前に2年間かけて、道具とジグを開発しようやく念願を叶えることができました。
その桜組子は一枚の花弁を作るのに特別なノコギリで11か所の加工を施し花弁の輪郭を表現した組子で、加工においては集中することが必要なため、集中できる夜限定の加工となります。 桜組子で用いた曲げの技術を駆使して、藤の花弁にも挑戦しました。一枚の花弁を作るのに23か所の加工を施すとても高度な技術が必要で、私が製作する組子の中で一番難しい技術です。